大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)177号 判決

事実及び理由

原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。

1  原告の主張1について

成立に争いのない甲第二号証ないし第五号証によると、つぎの事実が認められる。

すなわち、(一) 第一引用例には、閃光放電ランプで照射された被写体からの反射光をセンサが読み、その情報を積分回路に供給してこれを積算させ、その積算値が適正な露光に必要な値にまで達したとき、閃光を停止させる旨の記載がされている。

(二) また、第二引用例には、第一引用例記載のものと同様な「オートストロボナー」において、閃光放電ランプDで照射させた被写体からの反射光をフオトセンサG(本願考案における受光素子に相当する。)によつて検出し、ついで、回路Hによりセンサの出力を測定し、露光が適正なレベルに達したとき、前記測光回路Hからトリガ回路I(本願考案における制御回路が備える起動用スイツチに相当する。)に信号を送つて低抵抗フラツシユチユーブJ(本願考案における電子スイツチング素子に相当する。)を点弧(fire)し、これによつて閃光放電ランプDを消灯することが記載されている。もつとも、第二引用例には「積分回路」という用語は使用されていないが、前記のように、センサの出力を測定し、露光が適正なレベルに達したとき信号を発生する測光回路Hが示されており、他方、第一引用例には、センサからの出力を積分回路に供給して、その積算値が適正な露光に必要な値になるまで積算することが記載されており、いずれも「オートストロボナー」についての技術であるので、これを参照すれば、第二引用例における測光回路Hを積分回路とする(この場合、測光回路Hは、センサからの出力を測光、積算し、露光が適正レベルに達したときに信号を発生することになる。)ことは、当然に考えられることである。

したがつて、これら両引用例の記載を総合して本願考案と対比してみれば、審決がその一致点として「この電気量を積分回路により積算してその積算電圧が所定値に達した際に信号を発生し、この信号により起動用スイツチを導通させ、これによつて電子スイツチング素子を制御して前記閃光放電ランプに流れる電流を遮断することにより、その発光光量を適正露光になるように制御するようにした自動光量制御閃光発光装置である」ことをあげている認定に誤りはない。

なお、本願考案においては、その測光回路に積算用コンデンサを備えているが、例えば、第三引用例においても積算用コンデンサ51が設けられている事実からしても、かかる積算用コンデンサは積分回路を構成する要素として極めて普通のものであることが明らかであるから、この点に考案力は認められてない。

なおまた、成立に争いのない甲第八号証によれば、第一、第二引用例によつて紹介された「オートストロボナー」のテクニカル・マニユアルである同号証には、測光に関連した積分回路の記載がなく、そこに示されているものは微分回路であることが認められるけれども、第一、第二引用例には、前認定のとおりの技術事項が具体的思想として記載されているので、同号証の存在は、前記認定を何ら左右するものではない。そうすると、この点に関する原告の主張は理由がない。

2  原告の主張2について

前掲甲第五号証によれば、第三引用例には、引伸機についての技術事項として、ネガ71の濃淡にかかわらず、ネガ71を透過してフイルム77に入射する光量が所定値となるようにするために、ネガ71を透過した光出力の一部をフオトセル61で検出し、その出力を積分用コンデンサ51に蓄積し、その積分用コンデンサの積算電圧が所定値に達した際、スイツチング装置47及び23を動作させて発光管1の放電を停止させ、よつて、発光管(放電ランプ)1の発光量が自動的に制御されるものが示されていることが認められるから、この意味において、自動光量制御閃光発光装置であるといえる。そして、測光回路を構成する前記積分用コンデンサ51にバイアス抵抗57を有する可変バイアス電圧回路を設けて、バイアス抵抗57の調整により積分用コンデンサ51へのバイアス電圧を適宜変化できるようにし、これによつて積分用コンデンサの積算電圧が所定値に達した際に信号を発生する所謂測光回路の感度を調整することができるのであるから、結局、第三引用例には、審決認定のとおり「フイルム面への適正な入射光量を得る (適正露出)ため、該入射光の一部を測光回路によつて測光、積算し、その積算値が所定の値に達した際に光源である閃光放電ランプに流れる電流を電子スイツチング素子により制御するようにした自動光量制御閃光発光装置として、測光回路の感度を調整するための手段を設けること」が開示されているということができる。もつとも、第三引用例には、ネガ71とフイルム77との相対距離を変化させてネガ画像を拡大あるいは縮小する場合にも発光管の発光量が自動的に制御されるかどうかについては特に記載されていないが、この点が、どのように構成されているかは、前記審決の認定とはかかわりのないことである(ちなみに、前掲甲第二号証によれば、本願考案の要旨としての、装置の構造、組合せにおいても、カメラと被写体との距離の大小に応ずる上述以上の特定の構成を要件としてはいないことが明らかである。)

そうすると、この点に関する原告の主張は理由がない。

3  原告の主張3について

成立に争いのない甲第六号証によると、昭和三九年三月発行にかかる一般消費者向きの雑誌における商品カメラ等の紹介記事である、第四引用例に記載された絞り板は、カメラの測光回路に附設されるものではあるが、ASAリングとしても示されているように、測光回路を構成する受光素子(CdSセル)の前面に設けられた入射光制御素子であつて、写真撮影条件(フイルム感度)に応じてその絞りを変えて測光回路の感度を、その測光回路が不作動となるまで調整できるようにしたものであることが認められる。右事実と弁論の全趣旨とによれば、審決が、これにより、本願考案の構成における「測光回路の感度を調整する具体的な手段として受光素子の前面に絞りを設け、これをフイルムの感度に応じて受光量が完全に遮断するまで調整することができるようにする」ことを慣用手段としたことに誤りはない。

もつとも、本願考案は、所謂オートストロボ装置の測光回路にその感度を調整する手段として、前示のような入射光制御素子を附設しているものではあるが、前掲甲第二号証によつても、その構成として、かかる入射光制御素子を特にオートストロボ装置の測光回路に適用するに当つての格別特段の構成としたものとも認められないし、前掲甲第二号証ないし第五号証及び成立に争いのない甲第九号証、第二一号証によれば、自動光量制御閃光発光装置は、常にカメラと共に、これに附属させて使用するものであり、測光回路として、被写体からの光量を測定してカメラ内のフイルムに適正光量を与えるという目的と作用効果とにおいて、カメラと自動光量制御閃光発光装置とは、いずれも同一であり、両者は密接に関連し、技術分野を異にするものとはいえない。

そうすると、この点に関する原告の主張も理由がない。

そうすると、原告の主張はいずれも認めるに由なく、本件審決を違法としてその取消を求める本訴請求は、失当として棄却するのほかはない。

〔編註その一〕本願考案の要旨は左のとおりである。

クセノン等の稀ガスを充填した放電ランプと、該放電ランプに流れる電流を遮断することにより発光光量を適正に制御する電子スイツチング素子と、前記放電ランプで照射された被写体からの反射光を受光して電気量に変換するための受光素子並びに該受光素子からの電流で充電される積算用コンデンサを備えて該積算用コンデンサの積算電圧が所定値に達した際に信号を発生する測光回路と、該測光回路からの信号により導通する起動用スイツチを備えて該起動用スイツチが導通したことにより発生するパルスで前記電子スイツチング素子を制御する制御回路と、前記測光回路の感度を写真撮影条件に応じて調整し、かつ、該感度を該測光回路が不作動となりうるまで低下させるために前記受光素子の前面に設けられた入射光を制御しうる絞り等の入射光制御素子とをそれぞれ備えてなることを特徴とする自動光量制御閃光発光装置。

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